5.越境の侵入 にゅる、にゅる、にゅるるん… Mr.Tはオイルを手に、底辺に迫った。 ふだん鈍感な底辺だが、 「う、あん?…そ、その姿は!?」 迫ってくる相手に、さすがにただならぬものを感じたようだ。 それもそのはず、Mr.Tは、いつの間にか上半身、裸になっていたのだから。 「恐くないさ。さあ、キミも一緒に…」 と、彼は底辺のTシャツに手をかける。 「う、うわぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁああ〜〜〜〜!」 大声を出し、底辺は走って部屋を出ていってしまった。 「…………くそぅ、もうちょっとだったのに」 ため息をついて、Mr.Tはメモ帳を開いた。 そこには何人かの名前が書かれ、頭に×印がつけられていた。 × サギ師 × 子泣きジジイ そして今、三人目の名前に×をつけた。 × 底辺 「いよいよ、本命といくか。きっと読者も待ってるだろうからな」 四番目に書かれた名前を見て、彼は隠微にニヤリと笑い、 「じゅるる…」 と、舌なめずりをした。 * 「なんだこりゃ?」 その男は、一人、部屋で本を読んでいた。本…といっても紙の本ではない。ipadで電子書籍を読んでいたのだ。 それは「アキバの休日」という小説だった。登場人物のアイコンが変更できるのはいいのだが、 ヒロインのをに変えると、まるで男と男が恋愛してるような物語に読めてしまうのだ。 「なんだこりゃ?」 とその男・相馬たかしは再つぶやいた。電子書籍についての感想だ。 「違うよ!」 と相馬は、この文章そのものにツッコんだ。 「なんで、本文の中にまで作者の宣伝が入ってくんだ、ってことだよ!」 ――へ? 「やりすぎだろ。作者の分というものをわきまえろ!」 ――あ。ス、スミマセン! 作者は土下座した。 プルルル… その時、相馬のケータイが鳴った。電話に出ると、 「私だ」 Mr.Tの声がした。 (続く) 「相馬たかしさん、ゴメンナサイ!」 萌えとはなんだ?!悩む王子、駆けるオッサンたち、そして戦うメイドさん! オタクの街・アキバを舞台に壮大な追走劇が今、始まる…!? 『アキバの休日/藤井青銅』【85円】で大好評販売!iphone/ipadオンリーです。 http://itunes.apple.com/jp/app/akibano-xiu-ri/id515835717?mt=8 |